富山県射水市は射水ケーブルネットワークが提供するIoTをさまざまな分野で多数導入し、水害予防から産業、教育、観光振興、そして地震・津波対策まで、地域DXを急速に強化している。観光振興の目的でイベントなどの人流データの計測・分析をするために導入したロケーションアナライザーは、能登半島地震での市民の避難行動の実態や課題の抽出にも活用され、地震・津波対策強化の取り組みが進められている。自治体がケーブルテレビ事業者と連携した地域DXの成功事例として注目されている射水市のIoT事例をレポートする。
ケーブルテレビ事業者と自治体の双方を取材しレポートする後編の今回は、秋田ケーブルテレビの提案により防災IoTの実証実験を行った由利本荘市を取材した。同市は市内を横断する1級河川、子吉川の支流である大沢川の水位などを水位計と河川監視カメラで監視するIoTの実証実験を、2023年6~12月まで半年間実施した。同市が秋田ケーブルテレビを採用した理由や、地域産業振興や公共交通などの分野にも同社のソリューションの利用を拡大していくことの可能性などをレポートする。
秋田県内の各自治体の間で、地元ケーブルテレビ事業者である秋田ケーブルテレビ(本社:秋田市)が提供する河川水位や積雪監視などの IoT ソリューションの導入が広がりつつある。
大手メーカーや大手通信事業者も自治体に IoT ソリューションを提案している中、なぜケーブルテレビ事業者が自治体から IoT のパートナーとして選ばれているのか。
そこには、地域課題を理解できる地元事業者であること、通信・映像の高度な技術を持っていること、自治体と密接な関係を築けることなど、ケーブルテレビ事業者の特長がある。
ケーブルテレビ事業者と自治体の双方を取材し、前編・後編の2回でレポートする。
前回配信した本記事「前編」では、静岡県三島市の、行政組織の壁を越えたDXでの連携や、各種オープンデータの連携で、地域密着の事業者としてのTOKAIケーブルネットワークがその調整者の役割をいかに果たしてきたかを見てきた。
だが、水DXで同社が寄与したのはそれだけではない。通信事業者であるケーブルテレビのインフラや技術力が活用され、災害時でも強靭な高性能・高信頼の水DXを実現している。
以下の本記事「後編」では、三島市が通信事業者であるTOKAIケーブルネットワークにシステム構築を委託したことによる効果について、技術面からレポートする。
静岡県三島市は「水の都」とも呼ばれる。噴火した富士山から流れてきた溶岩の末端に位置する三島市には湧水群があり、中心市街地にも湧水や川が多数ある。楽寿園や源兵衛川、白滝公園、桜川など、水辺が美しい景勝地も多い。三島市では人々の暮らしのすぐ近くに湧水や川があり、人々は水と暮らしている。三島市の水に魅せられた観光客も国内外から大勢訪れる。しかし、暮らしの近くに水があることは、ひとたび大雨になれば水害の危険もあるということにほかならない。
そこで三島市は、水に関する防災と観光案内の両方を兼ね備えた情報発信をWebサイトで行う「水DX」のサービスを2023年に開始した。
人口減少や高齢化など全国共通の地域課題を解決する方法として、地域DXが期待されています。しかし、それを実現するのは容易ではありません。地域住民のニーズと提供されるサービスの不一致、行政区分や役所内セクションの壁など、乗り越えなければならない課題が多いからです。
この問題に対して、地元のケーブルテレビ事業者と連携して克服している自治体が全国で増え始めています。ケーブルテレビは通信やデジタルの技術力を持っているだけでなく、地域で行政や企業などとの信頼関係を確立しています。このケーブルテレビの強みを活かして、住民にとって役立つ地域DXを実現しているのです。